最初から魚に興味が
あったわけじゃない。
「決め手は出社時間が9時だったから」と口に出せる素直さ。地元柏崎生まれ。高校卒業後に入社して以来、主に通信販売事業部に身をおき働いてきた。特にこだわりはなかった。でも冷静に振り返る。自分は運がいいのか、いろんな仕事を経験させてもらった。
通販事業はもちろん、営業、接客、商品管理、それにカタログの制作。日本各地に出向くこともあった。「同じことをずっとやるのは苦手」という性格にも合っていた。
顔が見えないからこそ、
妥協は一切なし。
通販のリピート率は75%。異常な数字だとコンサルの人にも驚かれたことがある。品質には徹底的にこだわる。見た目、味、冷凍方法。何度もチェックし、苦情が出ないよう細心の注意を払っている。特に力を入れているのがアソート商品だ。複数の問屋から仕入れた品を組み合わせ、お客さんにとって「ちょっとずつ、いろいろ」と楽しめるような工夫が光る。
加工場では味噌漬けや粕漬け、西京漬けなどすべて手作業。塩辛くなりすぎないよう凍結方法にも気を配る。通信は顔が見えない分、信頼がすべて。変なものは絶対に送れない。
新潟の良さはわかる。
でも、課題もある。
「もっと外に出していけばいいのに」と思うことがある。
新潟の豊かな自然や資源に誇りをもっている。
海も山もあり、米も水も十分すぎるほどおいしい。
けれども、商売は実に難しい。加工業者は少なく、PRが控えめな県民性も課題だ。
自分たちの通販事業だって安泰じゃない。高齢化する顧客層、新規顧客の獲得の難しさ。
ECを運営する大手の会社には、太刀打ちできないことくらいわかっている。
だからこそ「うちの魅力をどうやって発信するべきか」。
冷静に、でもしっかりと熱いものをもって話す自分がいる。
新潟の可能性を信じる。
だから、続けていける。
昔から食べてきた紅ズワイガニ。今では冷凍技術も進んで、おいしく食べられるようになった。これからやっていきたいことは、新潟らしさの発信。
カニはもちろん、米山プリンセス(柏崎市が認証するコシヒカリのブランド米)、地酒など地域の魅力を丁寧に届けていきたい。そりゃ課題も多い。環境の変化に価格高騰。ふつうに食べてきたものが、食べられなくなる日が来るかもしれない。それでも、きっと次がある。今日も目の前の海の幸、山の幸と向き合い続ける。信じて待ってくれている、誰かの食卓を豊かにするために。

