新潟県民の
ソウルフード。
元祖半身揚げ。だれもが知っているおなじみの味、と思いがちだが「あぐらをかいてはいけない」と淡々と話す。
祖父が創業した鳥専門店せきとり。当時受け継いだ養鶏場がうまくいかず、ふと祖父の頭に思い浮かんだことは鶏の唐揚げをつくること。当時、学校給食でカレーが流行っていたことをヒントに、「カレー味にしたらいいのでは?」とカレー粉をまぶして生まれたのが半身揚げだ。
当時まだまだいろんなものが十分になかった時代。「とにかくみんながおいしく食べられて、お腹いっぱいになるように」という思いが込められている。カレー味は、祖父の決意でもあった。
祖父の味を守る。
自分で決める。
祖父の働く姿をいつも身近で見ていた。けれどもすぐに家業を継いだかというと、そうではない。卒業後は飲食店や鉄工所などで働いた。いろんなことを経験したかった。「いつかはお店を継ぐんでしょ?」というまわりの声。正直好きではなかったという。人のせいにするのがいやで、「誰かに言われたから」は言い訳だ。どんなことも自分で決めたい。
そして、それは突然訪れた。祖母が亡くなったときの、さみしそうな祖父の背中。いまでもはっきりと覚えている。「力になりたい」そう決意して今に至る。
黙々と。
だけど、気配りも。
せきとりの味にレシピはない。カレー粉や塩をふる回数も「このくらい」祖父のふるまいを目で見てからだで覚えて、あとはとにかくやる。そんな性格は子どものころからはっきりしていたらしい。ひとり黙々とやっていたプラモデルづくり。とにかく、続ける。毎日同じ味を意識している。祖父の味を変えないように。まるで工芸品と同じだ。半身揚げはどこにも負けない。一方で、お店では自分は調整役。働いているスタッフやお客さまへの気配りも大事。まわりを観察して「次に自分がどう動く必要があるかを考えなくちゃ」と冷静に自分を分析する。
おいしさを、もっと多くの人へ。
子供からご年配の方まで幅広いお客さまに召し上がっていただきたい。今では親子三代で通っていただくお客さまも。世代をこえて、おいしさが伝わっていくことは本当にうれしい。そして、まだせきとりの味と出会っていないお客さまのために、スーパーやネットでの販売を広げてゆきたい。
「新潟にはこんなにおもしろい、から揚げがあるんだ!」というワクワクを届けたい。やった決断には後悔はない。そう覚悟を決めて、きょうもお店に立っている。

