親父はパイオニア派。
自分は深堀り派。
果物をつくり現在10代目。ここは昔から梨をはじめ果物づくりが盛んな土地だ。チャレンジ精神。それが渡辺家のDNA。梨といえば「二十世紀梨」の時代に、ルレクチェをはじめた。良く言えば、もの好き。好奇心旺盛。けれども、自分は栽培を整えたり、いまあるものを深堀りしていったりするほうが好きだった。
突き詰めたから生まれた
音楽生育。
数年に一度、生育がおくれる時期がある。植物に対してクラシックはいいとは言われていた。まったく例のない、事例をつくりたかったわけではない。好きを突き詰めていった。「どうやったらよく育つか?」それだけを考えていた。やらない理由がないから。やってみると果物に背景が広がり、物語ができる。
これまでの基準は大きいか、きれいか、おいしいか。だけど音楽好きにも刺さる、人を喜ばせる価値が生まれた。これはおもしろい。ひっこみがつかなくなった。
素直に自信を
もちにくい性格。
けれども。
「人との話が苦手」「自分がどう思われているのか」そういう気持ちがどこか強かった。 考えているうちに、気づいたこと。果物と向き合うと、よくわかる。 植物がいまほしいのは水なのか、肥料なのか。受け身だからわかることもある。 師匠である祖父はよく言った。「黒子に徹しろ」と。 だんだん自分を受け入れられるようになってきた。 すると、すこしずつお客さんがふえていった。
食べるなら、
そのままが一番。
なめらかな触感。高い糖度。自分たち以上の農家さんは他にもいる。自分のつくりあげたい理想に近づけるだけ。おすすめの食べ方も人それぞれ。
そのままが一番だし、食べたいと思ったときに皮をむいて食べたらいい。
いままでやってきたことも、やめてもよかったかもと思うことがある。けれども、手をかけたものがおいしいと思ってもらえる。ちゃんと準備すれば喜んでもらえる。それが楽しかった。ただひたすら、果物と向き合う。その結果、育てたものが喜ばれる。それがやりがいになって、今がある。
