異業種からの酒造り。
業界の封建的な体質に驚きながらも「俺なら大丈夫」と飛び込んだ酒造りの世界。右も左も分からなかった。でも、根性だけはあった。評判のいい酒屋の話を聞けば、どこへでも何度でも。しだいに、慕ってくれる人もできて仕事につながった。
酒造りには明確な哲学をもつ。「酒は料理の脇役であるべき」。すっと入って、すっと抜ける、料理の邪魔をしない味わい。派手さやインパクト?そんなものはいらない。繊細さと調和。水の硬度や酵母のバランスにこだわり、軟水で仕込むことで柔らかい酒質を目指している。
すべてに通じる、
弥彦村テロワール。
水は弥彦山の伏流水を、米は契約した田んぼの米しか使わない。酒造りには「その土地との関係性」が何よりも大事だと考えるからだ。山から水を引き、風に倒れない稲が必要となれば、畦道の広さを倍にする。自ら動いて工夫を凝らした。神社の行事や消防団、青年会など地域活動にも積極的に参加した。一年目は人の話を聞き、二年目からは意見を言い、最後には人を立てる。地域に根ざすことがテロワールの本質だと考えているからだ。
あえて言うなら
「おれはパンク」。
組合にも顔を出しながら、既存の体制に疑問を投げかける。
昔からそういう性分だった。「鑑評会はF1。公道なんかを走れない」。
だから、そればっかり追いかけたって何の意味もない。
新しいマーケットをつくるべく、大手メーカーとは一線を画す姿勢も貫いてきた。
「清酒ではなく日本酒」。造りにこだわり、五感で判断。データ重視の大手とは異なる。
クラフトビールやクラフトサケのように、
独自の価値を確立したいという思いも強かった。
地域と息の合う生き方。
自分にしかできない酒。
「いい加減で面白くて、でも人間味がある」。そんな生き方が理想だ。フィギュアを500体以上所有し、スケートボードのチームを作り、パンクバンドを組み、SNSで情報収集。型にはまらない生き方を貫きながらも、仲間や地域との絆を忘れない。目の届く範囲、地に足のついた営み。米から酒造り、生き様まですべてが弥彦村テロワール。それが、自分のできるすべて、とも言える。
酒造りにおいて、新潟にはまだ足りないものがある。風穴をあけて、新たな風を吹き込むチャンスはまだまだある。

